狭心症と冠動脈CTについて

2024年05月27日

本日は循環器系の大きな疾病である狭心症の主な診断ツールである冠動脈CTについて、少しお話させていただきたいと思います。少し長くなりますが、興味のある方は是非ご一読ください。

近年狭心症の疾患概念が大きく変わり、糖尿病や脂質異常症、高血圧症等の動脈硬化リスクを持っておられる方に多くみられる労作性狭心症といわれるような、心臓の栄養血管である冠動脈が実際に狭くなっているタイプのものに加えまして、INOCA(イノカ):虚血性非閉塞性冠疾患と呼ばれる実際に目視できる明らかな狭窄・閉塞を認めないにもかかわらず、胸が痛くなったり身体にトラブルを起こすタイプのものがあることがわかってきました。

目視できる狭窄が存在しない狭心症の診断・治療が発展していくことで、改めて狭心症の診断・治療については専門性が求められるようになってきています。実際に狭心症と診断される経緯・検査方法には症状、心電図変化、運動負荷心電図など多くのものがありますが、究極を言えば実際に冠動脈に目視できるような狭窄があるかどうか、の評価が大切であることに変わりはないものと考えます。同じような症状であっても冠動脈に目視できる狭窄があるかどうか、はその後の管理と予後に大きな違いが生じるためです。

冠動脈の評価におけるひとつの究極はカテーテルによる検査ということになりますが、近年はCTの発達により動脈に直接カテーテルを挿入せずとも冠動脈の評価ができるようになりました。通常のCTと違いますのは心臓は常に動いていますので、写真として撮影したデータがそのまま評価ができるものではないということは大きな特徴です。CT撮影で得られたデータを処理し、診断できるような形にワークステーションを用いて画像の構築を行います。この画像構築のクオリティは診断精度にとても大切です。当院では開院以来4000件の心臓CT検査と1000件以上の心臓カテーテルを行ってきました。実際にCTで画像を作るにあたり、カテーテル検査・治療の現場と実際を医師・技師が共有していることは診断精度において強みであることは疑いの余地はありません。また得られた画像からよい診断が可能となるデータを抽出する(取得された凄まじい数のデータから抽出しています)ことには多くの時間と手間を必要としますが、当院は専門施設でもあることから専任スタッフが心臓CTの解析に十分な時間を割くことができることも当院の強みでもあります。結果、CT撮影を行いその日に検査結果をお伝えできる環境が得られております。

クリニックの機動性と循環器内科・心臓領域の専門医・専門技師・看護師(エキスパートナース・認定ナース多数)・心臓リハビリテーション指導士の総合力をもって、愛北ハートクリニックは狭心症を含めた心臓病の早期発見早期治療を通じて地域の患者さんの生活の質の向上、ひいては心臓死の減少、撲滅に貢献することができればと考えております。

胸が痛い、締め付けられる、違和感がある。運動をしていると息切れがする。動脈硬化リスクを持っている。狭心症や心筋梗塞の家族歴がある、など。心臓のご不安がありましたらいつでもご相談ください。スタッフ一同お待ちしております。

投稿者:副院長・心血管カテーテル治療専門医 熊谷