右脚ブロックや左脚ブロックの心電図波形、原因や疾患などについて
2021年02月22日
本記事は、下記関連ページの続きとして、記載しました。ご興味のある方は、是非、最初から読んでみて下さいね。
関連ページ: | ・心電図の異常は、何科に行けばいいの? |
脚ブロックとは?右脚ブロック、左脚ブロックのザックリ解説
心臓には電線のようなものが張り巡らされていると思って下さい。その電線に電気が流れることで心臓は動きます。心臓の右側の方にいく電線が右脚、左側の方にいく電線が左脚と呼ばれます。
右脚や左脚と呼ばれる電線に問題がある事を、右脚ブロック、左脚ブロックと言います。それぞれが、さらに細かく分類されます(下記表)
右脚ブロック | RSR’パターン |
不完全右脚ブロック | |
完全右脚ブロック | |
左脚ブロック | 不完全左脚ブロック |
完全左脚ブロック | |
左脚前枝ブロック | |
左脚後枝ブロック | |
二枝ブロック | 完全右脚ブロック + 左脚前枝ブロック |
完全右脚ブロック + 左脚後枝ブロック |
右脚ブロック、左脚ブロックの心電図波形で、クリニック受診前の確認項目
心電図検査を受けられた、健診センター・医療機関などから、緊急指示があった場合は、その指示に従って下さいね。
健康診断などの心電図検査で、脚ブロック、右脚ブロック、左脚ブロックをいわれました。気になる症状があるけど、経過観察でいいの?原因や、疾患が気になります。症状がなくても精密検査は受けるべき?など気にされている方は、循環器科、循環器内科を標榜するクリニックや病院受診が推奨されます。
また、クリニックに所属する医師のプロフィールを、チェックしてからの受診をお勧めします。医師の得意なジャンルを、知る事が出来るからです。
クリニックのWEBページにて、医師の経歴や所属学会などを確認する事ができます。WEBページのないクリニックでも、看板に医師の専門医資格などが、掲示されている場合があります。
医師プロフィールに、下記表記されているかチェックしましょう。
- ●●心血管(インターベンション)学会 専門医 / 認定医 / 所属
- ⇒ 心臓病の中でも、とくに狭心症や心筋梗塞を得意としている事を示しています。
- ▲▲循環器学会 専門医 / 認定医 / 所属 ⇒ 心臓病を得意としている事を示しています。
- ■■心臓病学会 専門医 / 認定医 / 所属 ⇒ 心臓病を得意としている事を示しています。
狭心症や心筋梗塞を、得意とする先生の診察を受けると、精密検査の計画や、検査後の治療方針決定がスムーズとなります。
しかしながら、より高度医療に対応でき、高度医療機器を有している総合病院などへ、紹介受診が必要となる事もあります。必ずしも、そのクリニックで全て解決する訳ではありません。
プロフィールに表記のある医師は、総合病院へ紹介受診となる場合でも、専門ジャンルの病気に詳しいため、総合病院の専門の先生とコミュニケーションをとり、紹介受診がスムーズに進む可能性が高くなります。
クリニック受診前に、電話などにて、希望医師の診察予約が可能かどうか、確認されるとスムーズです。
関連ページ: | スタッフ紹介 |
右脚ブロック、左脚ブロック 心電図波形にて、検討される精密検査
右脚ブロック、左脚ブロックにて、考慮される外来精密検査は、以下となります。
- 安静心電図検査(あんせいしんでんずけんさ)
- 心臓超音波検査(しんぞうちょうおんぱけんさ)
- 冠動脈造影CT検査(かんどうみゃくぞうえいCTけんさ)
- ホルター心電図検査(ほるたーしんでんずけんさ)
- 血液検査(けつえきけんさ)
- 【入院】心臓カテーテル検査(しんぞうかてーてるけんさ)
これら全ての検査が、必要という事ではありません。検査方法は異なるけど、調べている内容としては似ている、といった検査も記載しています。
また、他にも、心臓を詳しく調べる精密検査は、色々あります。
症状や、年齢、生活習慣、持病といった背景、医師の診察によって、推奨される検査は変わってきます。
安静心電図検査
- 所要時間: 1分程度
- 自己負担額: 約130円 ~ 400円(自己負担割合によります)
健康診断などでやったのに、改めてもう一回やるの?と思われるかもしれません。
違ったタイミングで心電図検査をすることにより、前回の検査から変化がないか、再現性があるかどうか等をチェックします。検査当日に、結果説明が可能となります。
心臓超音波検査
- 所要時間: 20分程度
- 自己負担額: 約880円 ~ 2,800円(自己負担割合によります)
テレビCMで、お医者さんと妊婦さんが、お腹の赤ちゃんを、超音波検査で確認している場面をご覧になったことがありますか?
同じ原理の機器を左胸にあてることで、心臓の筋肉の状態や、ポンプとしての機能、弁(心臓の血流を制御する構造)機能、etc.を、動画で確認する事が出来ます。
体に害がなく、安全に行う事が出来る検査です。所要時間は20分程度です。検査当日に、結果説明が可能です。
冠動脈造影CT検査
- 所要時間: 20分程度
- 自己負担額: 約3,000円 ~ 9,200円(自己負担割合によります)
心臓の栄養血管である、冠動脈(かんどうみゃく)が閉塞していないか?狭窄していないか?をチェックする検査です。
点滴注射で造影剤を用いながら、CTを撮像します。造影剤使用にて腎臓に負担がかかるため、腎臓機能が悪い、30秒程度の息止めが難しいetc.で、検査できない場合もあります。
CTの撮像自体は20分程度ですが、解析に時間を要します。前後の点滴注射もあり、検査当日に結果を聞かれる場合、3時間程度かかります。
ホルター心電図検査
- 所要時間: 1日程度
- 自己負担額: 約1,750円 ~ 5,400円(自己負担割合によります)
24時間(最低8時間以上)心電図を装着、記録します。装着中、激しい運動や、汗だくとなるようなお仕事は出来ません。
お風呂に関しては、湯舟につかるのは難しいですが、シャワーまでは可能な機種もあります。
脈が速くなりすぎていないか?、脈が遅くなりすぎていないか?、一日で不整脈がどれ位でているのか?、じつは危険な不整脈がでていないか?、波形が変化するのか?、etc.をチェックします。
24時間分を解析するため、検査機器のご返却後、結果説明まで2~3日かかります。
血液検査
- 所要時間: 3分程度
- 自己負担額: 約1,200円 ~ 3,600円(自己負担割合によります)
採血により血液を調べます。脈が速くなる原因として、貧血などや、不整脈がでやすくなる原因として、電解質異常や、甲状腺ホルモン分泌異常などが知られています。
これらの項目を、血液検査でチェックする事ができます。また心臓への負担のかかり具合を、チェックできる検査項目もあります。
結果説明まで、当日 ~ 1週間程度後と血液検査項目により幅があります。
【入院】心臓カテーテル検査
医師の診察や、外来での精密検査の結果、また症状によっては外来精密検査を経ずに、心臓カテーテル検査が必要となる事があります。
クリニックや病院の多くが、心臓カテーテル検査を、入院検査としています。当院でも入院検査となります。
冠動脈と呼ばれる、心臓を栄養している血管が、狭窄していないか?、閉塞していないか?を外来検査以上に、精密に調べることが出来ます。
カテーテルとは、医療用の細い管を指します。手首、肘、足など、体の表面に近い部分を走っている動脈に、局所麻酔を使用しながらカテーテルを挿入します。
動脈を通って、心臓まで直接カテーテルを送り込み、選択的に血管を造影し、狭いところや、詰まっているところが無いかを調べます。
関連ページ: | 狭心症、心筋梗塞のカテーテル検査・治療 |
補足
- 所要時間は、検査のおおよその時間となります。(ご説明、前後のお待ち頂く時間は含めません)
- 自己負担額は、検査のみの目安となります。(診察、お薬の自己負担額etc.は含まれません。制度変更に伴い、変わる事があります。)
- 各病院やクリニックの診療体制によって、所要時間、自己負担額、結果説明までの時間は異なります。
関連ページ: | 検査について |
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右脚ブロック、左脚ブロック 心電図波形から考えられる疾患、原因、状態など
右脚ブロック、左脚ブロックでは、以下の疾患、原因、状態が考えられます。
- 心筋梗塞
- 心筋症
- 心臓弁膜症
- 心房中隔欠損症
- 健常者
- etc.
・心筋梗塞
心臓を栄養している動脈(冠動脈)が閉塞してしまう病気です。心不全や、突然死の原因となります。梗塞部位により、心電図検査上、右脚ブロックや左脚ブロックを呈する事があります。
・心筋症
心臓ポンプの筋肉に、異常が生じる病気です。心不全や、突然死の原因となります。心筋の障害部位により、心電図検査にて右脚ブロック、左脚ブロックを示す場合があります。。
・心臓弁膜症
心臓の中には弁という、開放したり、閉鎖したりする事で、血流を制御する構造物があります。狭窄症や閉鎖不全症(逆流症)による、心室の圧負荷や容量負荷により、右脚ブロックや左脚ブロックを示す事があります。
・心房中隔欠損症
心房中隔に欠損孔を認める、先天性心疾患です。右室容量負荷により、心電図検査にて、右脚ブロックを呈する場合があります。
・健常者
心臓疾患含め、特に基礎疾患の無い方でも右脚ブロック、左脚ブロックを示す場合があります。しかしながら、RSR’パターンや右脚ブロックに比べると、左脚ブロック例では、なにかしらの基礎疾患を有する場合が多く、健常例は稀とされています。
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生活習慣病とは? |
ここからは、少し難しい話かもしれません。ご興味のある方は読み進めて下さいね。
脚ブロックは、心電図波形の異常となります。
心臓は、右心房にある洞結節より生じた電気刺激が、房室結節を介して心室に伝わります。
心室に伝わった電気的興奮はヒス束、右脚、左脚と呼ばれる伝導路を経由して伝わり、心室を収縮させます。
右脚の興奮伝導時間の延長や、伝導が途絶した状態は、右脚ブロックと呼ばれます。左脚の興奮伝導時間の延長や、伝導が途絶した状態を、左脚ブロックといいます。
右脚ブロック
・RSR’パターン
右脚の興奮伝導の流れが、わずかに障害されている事を示します。
心電図検査の波形異常とされますが、健常者でもみとめ、問題とならない事が多いとされます。
・不完全右脚ブロック
右脚ブロックにおいて、心房から伝わった電気的興奮は、左心室や心室中隔の左側へは、左脚を通り正常に伝導されます。
しかし、右心室へは右脚を通過できないため、左心室側よりゆっくりと電気的興奮が伝導されることになります。
心電図所見としては、胸部誘導V1において、rsR’パターン、またはM型のQRS波を示すこと、肢誘導aVL, 胸部誘導V5, V6 などでスラー、もしくは結節を伴った幅の広いS波を示すこと、
および右側胸部誘導V1, V2, V3において2次性のST-T 変化を示すことなどがあげられます。
QRS幅が、0.10~0.12secのものを、不完全右脚ブロックと呼びます。
・完全右脚ブロック
右脚ブロックにおいて、心房から伝わった電気的興奮は、左心室や心室中隔の左側へは、左脚を通り正常に伝導されます。
しかし、右心室へは右脚を通過できないため、左心室側よりゆっくりと電気的興奮が伝導されることになります。
心電図所見としては、胸部誘導V1において、rsR’パターン、またはM型のQRS波を示すこと、肢誘導aVL, 胸部誘導V5, V6 などでスラー、
もしくは結節を伴った幅の広いS波を示すこと、および右側胸部誘導V1, V2, V3において2次性のST-T 変化を示すことなどがあげられます。
QRS幅 ≧ 0.12sec(3mm)のものを、完全右脚ブロックと呼びます。
左脚ブロック
・不完全左脚ブロック
左脚ブロックにおいて、心房から伝わった電気的興奮は、右心室へは、右脚を通り正常に伝導されます。
しかし、左心室や心室中隔の左側へは左脚を通過できないため、右心室側よりゆっくりと電気的興奮が伝導されることになります。
QRS波の主たる成分である、左心室の伝導が障害されるため、QRS波は大きく変化します。
心電図所見としては、胸部誘導V6においてQ波が欠如すること、肢誘導aVL, 胸部誘導V6でM型の幅広いQRS波を認めること、
右側胸部誘導V1, V2, V3で幅広く深いS波があり、QS型またはrS型QRS波であること、肢誘導aVL, 胸部誘導V6において2次性ST-T 変化を示すことなどがあげられます。
QRS幅が、0.10~0.12secのものを、不完全左脚ブロックと呼びます。
・完全左脚ブロック
左脚ブロックにおいて、心房から伝わった電気的興奮は、右心室へは、右脚を通り正常に伝導されます。
しかし、左心室や心室中隔の左側へは左脚を通過できないため、右心室側よりゆっくりと電気的興奮が伝導されることになります。
QRS波の主たる成分である、左心室の伝導が障害されるため、QRS波は大きく変化します。
心電図所見としては、胸部誘導V6においてQ波が欠如すること、肢誘導aVL, 胸部誘導V6でM型の幅広いQRS波を認めること、
右側胸部誘導V1, V2, V3で幅広く深いS波があり、QS型またはrS型QRS波であること、肢誘導aVL, 胸部誘導V6において2次性ST-T 変化を示すことなどがあげられます。
QRS幅 ≧ 0.12sec(3mm)のものを、完全左脚ブロックと呼びます。
・左脚前枝ブロック
左脚はさらに、左脚前枝と左脚後枝にわかれます。左脚前枝のみが障害されたものは、左脚前枝ブロックと呼ばれます。
心電図上、QRS幅は正常であり、幅広くてもQRS幅 < 0.12secとされます。
著明な左軸偏位(肢誘導ⅠにおいてR波高 > S波高、かつ肢誘導ⅡにおいてR波高 < S波高、肢誘導aVRにおいてR波高 > S波高(-60°~-90°の事が多い))、肢誘導Ⅰ, aVLにおいてsmall Q波(+)かつS波(-)より診断されます。
・左脚後枝ブロック
左脚はさらに、左脚前枝と左脚後枝にわかれます。 左脚後枝のみが障害されたものは、左脚後枝ブロックと呼ばれ、左脚前枝ブロックより稀です。
著明な右軸偏位(肢誘導aVFにおいてR波高 > S波高、かつ肢誘導aVRにおいてR波高 < S波高(+120°~+180°の事が多い))、肢誘導Ⅱ, Ⅲ, sVFにおいてsmall Q波(+)かつS波(-)より診断されます。
二枝ブロック
・完全右脚ブロック + 左脚前枝ブロック
左脚はさらに、左脚前枝と左脚後枝にわかれます。左脚前枝のみが障害されたものは、左脚前枝ブロックと呼ばれます。
左脚前枝ブロックは時々、右脚ブロックを合併して、二枝ブロックとなります。
心電図検査にて、右脚ブロック波形(胸部誘導V1において、rsR’パターン、またはM型のQRS波を示すこと、
肢誘導aVL, 胸部誘導V5, V6 などでスラー、もしくは結節を伴った幅の広いS波を示すこと、および右側胸部誘導V1, V2, V3において2次性のST-T 変化を認める)とともに、
著明な左軸偏位(肢誘導ⅠにおいてR波高 > S波高、かつ肢誘導ⅡにおいてR波高 < S波高、肢誘導aVRにおいてR波高 < S波高(-60°~-90°の事が多い))を認めると、右脚と左室前枝の二枝ブロックと診断されます。
・完全右脚ブロック + 左脚後枝ブロック
左脚はさらに、左脚前枝と左脚後枝にわかれます。左脚後枝のみが障害されたものは、左脚後枝ブロックと呼ばれます。
左脚後枝ブロックは、しばしば右脚ブロックを合併することがあり、二枝ブロックとなります。
心電図検査にて、右脚ブロック波形(胸部誘導V1において、rsR’パターン、またはM型のQRS波を示すこと、
肢誘導aVL, 胸部誘導V5, V6 などでスラー、もしくは結節を伴った幅の広いS波を示すこと、 および右側胸部誘導V1, V2, V3において2次性のST-T 変化を認める)とともに、
著明な右軸偏位(肢誘導aVFにおいてR波高 > S波高、かつ肢誘導aVRにおいてR波高 < S波高(+120°~+180°の事が多い))を認めると、右脚と左室後枝の二枝ブロックと診断されます。
以上となります。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
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心電図検査全般や、正常所見につきましては、別ページをご参照ください。
投稿者:医師、医学博士 吉川